調香師/パフューマー - Page 2

L’ANONYME OU OP-1475-A

このところブログの更新を怠っている。久しぶりに本業(?)の香水企画に本腰で取り組んでいるからだ。新作ということでは6年振りになるのではないだろうか。今回は商品名を付けずに発表するが、『ラノニム(匿名)・ウ・OP-1475-A』という長たらしい呼び方で紹介されることになるだろう。後ろの部分のアルファベットと数字は膨大な数ある未発表の香水それぞれに付けられる登録照会番号のひとつだと思ってもらえば良い。この香りの調香師はオリヴィエ・ポルジュ。彼が得意とする洗練されて高級感に溢れる香りでありながら、非常にコンテンポラリーな点に惹かれて今回の新製品の発表に踏み切きることにした。このところ欧米は、ニッチフレグランスのルネッサンス。一年ほど前のインタヴューにおいて、「ニッチフレグランスは、映画に喩えるならB級映画」とやってしまい、他のニッチブランドから痛烈な非難を浴びたことがある。ニッチフレグランスは、香りの出来がB級のものがほとんどであるという意味で言ったのだが、お値段の方は超特級のものが多い。100ミリリットル以下の量で、日本円にして2万、3万というものがたくさんある。教養の無い成金が幅を利かすアメリカでは、値段が高ければ特別なものだろうということで、香りの完成度の低いことがオリジナリティだという錯覚に陥ってしまっているニッチファンが多いことに辟易している。今回の新作は、このような現状に一石を投じたいという気持ちもあるのだ。オリヴィエ・ポルジュと云えば現在最も才能のある若手調香師であり、次期シャネル専属調香師の可能性が囁かれている。そんな素晴らしい調香師の出色の逸品を、ニッチフレグランスだけでなく香水そのものの概念を覆すような価格に設定することに興奮している。陳腐な言い方かもしれないが、もっと多くの人に、いつまでも好かれるような素晴らしい香りを、誰もが躊躇せずに買えるような値段で提供するのが今回の目標だ。

日本人は臭い

先月の旅行中に立ち寄ることができなかった為に、未練がましくマルセイユの話題を繰り返すが、たまたま時期を同じくして南仏を旅行していたエックスワイフから、マルセイユの魚売りのオバちゃんの写真が送られてきた。臭ってきそうな写真だが、この魚がブイヤベースになるのかと思うと涎が出てきそうだ。ジャック・キャバリエがこれを見たらきっと卒倒することだろう。大分前の事になるが、ジャック・キャバリエがニューヨークに来た折に、三宅一生氏がニューヨークに行くと必ず寄るという日本料理屋に行ってみたいということから、ティエリー・ワッサー他数名も誘いその店で夕食を共にした。その時にジャックから聞いたのは、一生氏に招かれて日本に滞在するのは大好きだが、新しい香水を日本人の肌でテストしなくてはならないのが辛いということだった。日本人の肌は魚の匂いがしてかなわないらしい。そういえば、日本に住んだ経験のあるクリストフ・ロダミエルも似たようなことを言っていた。クリストフによると日本の地下鉄は生臭い匂いがして、ニューヨークの地下鉄よりもタチが悪いというのだ。我々は外国人の体臭が強いと思いがちであるが、我々自身の体臭には意外と鈍感なのかもしれない。まっ、そうは言っても、人の体臭が漂う国において香水文化が育つことを思うと、「日本人は臭い」という外国人からの意見が増えてくることによって、日本の香水市場ももっと活溌になってくることを期待したい。

(注:90年代の寵児ジャック・キャバリエは、世界屈指の調香師。出世作であるロードイッセイの世界的に根強い人気により、イッセイミヤケというブランド名が不動のものになった云われる。ティエリー・ワッサーは、世界的名門メゾンであるゲランの5代目調香師。ゲラン一族以外からの初めての調香師ということで大きな期待が寄せられている。前出の二人と比べ一回り若いクリストフ・ロダミエルは、今までの調香師のイメージには当てはめることのできない異才。日本では紹介されなかったが、ティエリーミュグレー社の援助を受けて映画「パフューム -ある人殺しの物語-」の為に、限定販売の非常に高価なコフレを創ったことでも知られる。)

調香師 ロク・ドング

同じアジア系だということから、身内のように親しく付き合っているロク・ドングという調香師がいる。現在、最も世界的に活躍しているこの若手調香師は、アジア系の調香師としては初のメジャープレーヤーだ。アルマーニからカルバン・クラインに至るまで、有名ブランドのビッグプロジェクトには必ずといっていい程、ロク・ドングの名前が指名候補として挙がってくる。その才能はジャック・キャバリエの若い頃と比較されることもあるが、典型的なフランス人の調香師と比較するには、彼の人物像やバックグラウンドは余りにも違い過ぎる。

幼少の頃にベトナムからボートピープルとしてアメリカに流れ着き、ニュージャージー州ニューアークのラフな環境(彼が高校生だった80年代後半は、カージャック犯罪の発生率が世界一という悪名の高い場所だったのを思い出す。)の中で育った。夢も大きいが、非常に現実的でハングリーな男だ。結婚する前はポルシェ、BMWなどと数台の車を乗り回していたが、結婚すると所有する車を一台だけにし、かわりに賃貸用アパートのビルを丸ごと購入するようなしっかり者。彼のものを値切る事の上手さに舌を巻いてしまうことがある。ロク・ドングの調香師としての唯一の弱点は、そのうち調香師を止めて全く関係の無いビジネスでも始めるのではないだろうかと思わせるようなところだ。ひとつの型には収まりきらないようなスケールの男なのかもしれない。

昨年の暮れに、ロク・ドングが奥さんと子供達を引き連れて遊びに来た。最近、その時に彼が言っていた事を思い出したら、それが頭から離れない… シャンプーを5ドルで売って商売になるのなら、香水も同じぐらいの値段で売れるはずだ。今まで、誰もそれをやろうとしたことがないというのは少しおかしいのではないか? つまり、シャネルに劣らないような高品質な香りを5ドルぐらいで提供することにより、新しい香水のマーケットが誕生するというのが彼の考えていることらしい。

現在市場に出回っている香水の数多くは、もはや付加価値などないのも同然だとすれば、香水が高価なものだというイメージを維持するための悪あがきをするよりも、ロク・ドングの言うように『切り捨てる』方向で香水の将来を考えた方が良いのかもしれない。

ロク・ドングのポートレート(撮影:渡邉肇)

“Hayaku- A Time Lapse Journey Through Japan” by Brad Kremer

Hayaku (‘hurry up’ in Japanese), a preview of what is to come by Brad Kremer, is a stunning short film. It is a bit of nostalgia for me not only visually but also olfactively – I can smell Japan in every corner of the film!

ものを見て匂いを思い出すということは珍しくないかもしれないが、隅から隅まで匂いを思い起こさせられるような動画に出会うことは滅多に無い。アメリカでの生活の方が長くなって身とっては、郷愁の念を抱かずにはいられない一編だ。

ソフィア・グロスマンとティエリー・ワッサーによれば…

これからの調香師はトイレタリーが重要な分野になってくるだろう。ファインフレグランスの調香師の需要はこの2年間下り坂だが、ビュティーケアとトイレタリーは調香師が少々不足しているという話を聞く。調香師なら今後は、ファインフレグランスだけでなくトイレタリーもどんどん手掛けるようになって欲しいし、オールマイティーな調香師が一流だという時代が来るというふうに感じている。

世界的に知られているダウニーの柔軟剤の中でも、長年ベストセラーを誇るエイプリルフレッシュの香りをつくった調香師が、かのソフィア・グロスマンだということはほとんど知られていない。ソフィア・グロスマンにとりダウニーはランコムのトレゾアと同様に誇りに思っている仕事だということを聞いたことがある。ソフィア・グロスマンと話をしていると、フレイバーとトイレタリーに関連する様々なアイデアの話題になることが多い。ファインフレグランスの調香師がもっと目を向けていかなくてはならない分野とのこと、まさに同感だ。

ソフィア・グロスマンが、”He is a good kid…” と評しているゲランの調香師ティエリー・ワッサーは、トイレタリーの調香師についてこう語ったことがある。「ファインフレグランスの調香師はファッションの世界と関わりがあるおかげで注目を受けるが、実のところ香りを操る腕前においては、優れたポーカープレヤーのようなことをしているトイレタリーの調香師にはかなわないよ。」ティエリー・ワッサーによればファインフレグランスというのは、何もない白いキャンバスに蝶よ花よという世界を描ければよいが、トイレタリーの調香師はアンモニアのようにひどい匂いがする様々な化学品の上に綺麗な世界を作り上げなくてはならないので、ファインフレグランスの調香師よりも遥かにテクニシャンなのだそうだ。

エバリュエーターについて

香水のエバリュエーターとは、どういう仕事をする人達なのだろう。

調香師同様に、世界のトップクラスのエバリュエーターのほとんどは、三大香料会社に所属している。調香師をアーティストに喩えるなら、エバリュエーターというのはアートディーラーかギャラリーである。エバリュエーターと調香師達が所属している香料会社というのは、アートの世界全体に喩えればよいだろう。ここで言うアートとは、古典やモダンアートは含まず、『現代』アートに限った喩え話だということをことわっておこう。フィルメニッヒとジボダンが、それぞれヨーロッパの現代アートの世界で、IFFはニューヨークのアート界ということにでもしよう。ロレアル、コティ、LVMHなどの抱える様々な有名香水ブランドのひとつひとつはアート作品を購入することが趣味のアートコレクター達だと思ってもらえばよい。

現代アートの世界では、アートディーラーやギャラリーに無しでは、アーティストの作品の価値が云々されることはない。いくらアーティストに才能があろうと、所属するギャラリーが無い状態では、世間にそのアーティストの作品に価値があるとは思ってもらえないのだ。いわゆるアートコレクターという人間は、アートディーラーやギャラリーが推薦するから作品を買うのであり、アートコレクター自身がギャラリーに属していないアーティストを探すというようなことは決してあり得ない。アーティストというのは、アートディーラーやギャラリーが認めてくれて初めて「作品」という商品を創れるわけだ。

アートディーラー、ギャラリーという比喩から、エバリュエーターという謎めいた仕事を少しおわかりいただけただろうか? ほとんど知られていない存在かもしれないが、調香師の才能を生かすも殺すもエバリュエーターの腕次第ということが想像できると思う。世界的な調香師であっても、エバリュエーターの助け無くしてヒット作品をつくることのできる調香師はほとんどいない。たとえ天才といわれる調香師が手掛ける香水でも、エバリュエーターがその才能を最大限に引き出し、エバリュエーターがクライアントの有名ブランドにその香りの良さ強くアピールした上で、初めて世界的に売れる香水が誕生する。エバリュエーターというのは縁の下の力持ちであるだけでなく、調香師の才能を操る名手であり、香水のトレンドを的確に予測する才能も持ち合わせている。当然のことながら、一流のエバリュエーター嗅覚力は、調香師と同等かそれ以上になってくる。

専属の調香師を抱えているゲランには、当然ゲラン専属のエバリュエーターが存在している。もしティエリー・ワッサーがこの先良い香水をつくり出せないとしたら、私としてはエバリュエーターの才能が充分でないとしか思わざるを得ない。

私の知る限り、現在エバリュエーターを必要としない調香師はジャック・キャバリエぐらいだ。彼は、エバリュエーターと調香師の両方を兼ね備えた珍しいタイプの調香師である。

世界レベルの調香師

最近香水関連の話を久しぶりに投稿した際、ある方から頂いたコメントの一部にこのような質問があった。

『日本にいる調香師が、世界的に知られている調香師に負けず劣らずの香水がつくれるのだろうか。』

答えは、Yes and No。一言では答えられない厄介な質問だが、私の答えとしては以下のようなことになる。

現在の香水の良し悪しの基準というのは、欧米のマーケットを中心にできあがっている。有名ブランドの香水の大半が、ニューヨークとパリにいる三大香料会社の調香師達によってつくられているという事実があるからだ。いくつもの香水ブランドを保有しているエスティローダーが、所有している或るブランドの香水をつくる場合を例にとってみると、エスティローダー社の香水開発チームは、ジボダン、フィルメニッヒ、IFF三社のいづれかに香りの依頼をする「しきたり」になっている。世界第4位のシムライズとその後に続く高砂香料にエスティローダーの香水開発プロジェクトがまわってくるという可能性は皆無に等しい。世界最大の化粧品企業のロレアルの場合は、シムライズにも新製品開発と製造の依頼をする場合があるが、他の三社に比べ有名調香師の数が少ないシムライズにお鉢がまわってくる機会は当然限られてくる。優秀な調香師達が、ジボダン、フィルメニッヒ、IFFにのみ就職を希望する背景のひとつにはこういう理由があるわけだ。非常に閉鎖的なシステムの中から有名な香水ブランドの新作が生まれてくることを理解いただけたと思う。優れた香水の基準というのはこのような状況の中で確立されているので、蚊帳の外にいるものがいくら努力しても暖簾に腕押しということになるのも当然だ。残念だが、先の質問に対しては「No」としか言いようがない…

しかし、アメリカに長く住んでいるからだろうか、逆境を想像すると “anything is possible” という気持ちが湧いてくる。日本の『xx香料』に類い稀な嗅覚力を持ち、香料に対するセンスが抜群の調香師がいたとしよう。日本にいるので仕事で香水をつくる機会は無いが、ローションからシャンプーの香りにいたるまで何でも一生懸命の仕事をこなしている。この日本にいるこの調香師が、仮に世界のトップクラスのエヴァリュエーターと出会い、時間を掛けて(経験がないので当然そうなる)そのエヴァリュエーターが求めている香りをつくれたとすれば、ディオールの新作の調香師に起用されるということも夢ではないかもしれない。あり得ないような仮説ではあるが、こんなことでも起きてくれないと同じ日本人としては少し寂しい。こういうようなことが起きるかもしれないという気持ちで相変わらずブログを続けているのかもしれない。

幻の調香師(ロン・ウィネグラッド)


Arturo Gatti (April 15, 1972 ~ July 11, 2009)
 
昔、ボクシングにのめり込んだ時期がある。数多くの世界チャンピオンを指導してきたヘクター・ロカが、私の三人目にして最後のトレーナーだった。昨年非業の死を遂げてしまったが、ヘクター・ロカが心魂を注いで育て上げた元世界王者のアーツロ・ガッティもまだ駆け出しのプロ、無邪気な少年っぽさが残っていたことをよく覚えている。当時私の二人目のトレーナは、ジージョというヘクター・ロカと同じパナマ出身の小太りのオッサン、数年前に母国コロンビアでピストルで撃たれ死亡した元世界J・フェザー級王者アガピート・サンチェスがジージョの自慢のファイターだった。ある朝のことだ、いつも時間に遅れてやってくるジージョを待ちながら自主トレをしていると、ロカがミットを構えて近づきながら、『おい、ノビ、打ってこい」と言ってきた。その翌日ジムに行くと、「時間にルーズなジージョはお払い箱にしろ。今日からお前のトレーナーは俺だ。」と、ロカは言い、私がボクシングを止めるまでの三年間、毎日二時間一対一でトレーニングに付き合ってくれた。良い思い出なだけでなく貴重な体験だったと今でも彼に感謝している。並外れた才能を発掘しては、それを世界の頂点まで引き上げていくということを幾度も繰り返すことができる指導者というのは、たとえ人格者というものには程遠いにせよ、人間として一味も二味も違う魅力にあふれていることをつくづくと感じた。ズル賢かろうが、イヤラシかろうが、そういった諸々のことを差し引いても十分に余りある魅力を持っていた。前置きが長くなってしまったが、ボクシングを止めた直後に香水の世界に迷い込んだためだろう、香水の世界をボクシングに喩える傾向があることを勘弁してほしい。先週、香水に関わるある出来事がきっかけとなり、「恩師」ヘクター・ロカのことを思い出したのだ。

以前にこのブログにおいて述べたこともあるが、調香師養成機関の最高峰といわれるヴェルサイユのイジプカ(ISIPCA)を卒業し、運良くジボダン、フィルメニッヒ、あるいはインターナショナル・フレバー・アンド・フレグランスに入社できたとしても、すぐに調香師として仕事が始められるわけではない。イジプカでの教育は下準備程度のものであり、本当のトレーニングは香料会社に入ってから数年に渡って行われる。香料会社でのトレーニングを終えてようやく「ジュニア・パフューマー」という肩書きがもらえるのだから、調香師になるための道のりは険しくて長い。ボクシングに喩えるなら、イジプカを卒業した時点ではまだアマチュアのレベルであり、技術、精神力、体力すべての面で即戦力のある調香師には程遠い。では、真の調香師はどのようにして誕生するのだろうか。インターナショナル・フレバー・アンド・フレグランスの調香師養成学校は、歴史のあるジボダンの調香師養成学校と並び称されている。イジプカを卒業後このインターナショナル・フレバー・アンド・フレグランスの調香師養成学校を終了し、今後が期待される非常にガッツのある日本人若手女性調香師もいる。インターナショナル・フレバー・アンド・フレグランスの調香師養成学校の「校長先生」は、名調香師ジャン クロード・エレナとはジボダン時代からの親友であり、現役の調香師だった時代には、ドル箱ブランドとなったアルマーニとケンゾーのそれぞれの記念すべき最初の香水を手掛けている。ロン・ウィネグラッドというアメリカ人の調香師の名前は日本では全く知られていないだろうし、欧米でも香水業界においてしか知られていない名前だ。ロン・ウィネグラッドにどのようなことから指導者になったのかを尋ねたことがあるが、競争することに疲れてしまったのと、ものを教えるということに魅力を感じたからだと言っていた。ロン・ウィネグラッドは、父親がプロボクサーのマネージャーだったことから、幼少のころはボクサー達に子守りをしてもらっていたという変わった環境で育ってきた人物である。ウィネグラッドの厳しい指導方法が、インターナショナル・フレバー・アンド・フレグランス社内で論議になることもあるようだが、調香師という仕事が少数にしか与えられない天職だとすれば、2、3年の「猛特訓」に耐えられないようで調香師になる資格があろうのだろうかとも思う。世界的な企業の人材教育方針としてスパルタ教育がふさわしいのかという批判も理解はできるが、ウィネグラッド流の生徒を打ち砕いたところから教育が始まるという方法論によって育て上げられた若手調香師達が、卒業後一年目からインターナショナル・フレバー・アンド・フレグランスの売り上げにいかに大きな貢献をしているかという事実をみれば、ロン・ウィネグラッドの即戦力養成メソッドの威力を否定することはできない。

将来優れた調香師になるだろうと思い、数年前に私がインターナショナル・フレバー・アンド・フレグランスに推薦した若者がいた。調香師になる前提でインターナショナル・フレバー・アンド・フレグランス社に入社することができ、昨年から同社の調香師養成学校で勉強をしていたが、ロン・ウィネグラッドの指導の厳しさに耐えられなくなったのだろうか、卒業をすることのないまま先日インターナショナル・フレバー・アンド・フレグランス社から去っていった。『こいつは才能がある』と思った若者の体力と技量の将来性はある程度推し量ることができるが、精神力というものはなかなか見極めることが難しい。私の育った時代には、何かを極めようと思ったら、指導者から罵倒され屑のように扱われて初めてものを学べるものだと信じていた。ジボダン、フィルメニッヒ、インターナショナル・フレバー・アンド・フレグランスと言ったトップの香料企業において『調香師』を名乗るためには並外れた技量があるのは当たり前のこと、その上に同等の忍耐力と図太さが無くては生き残っていけない。学校で挫けてしまうようでは、実社会ではとても生き残っていけないということだ。

未来の調香師のスポットに一つ空席ができたわけだ。調香師になるのが夢なら、頑張ってこのスポットを埋めてみては?