Scent - Page 2

11 Years

via Shaping Room | Photo by Hajime Watanabe
 
 
今日は、初代エスパフュームが誕生してから11年。(イメージをクリックすると11年前のサイトへ...)

Today marks the 11th anniversary since the first S-Perfume® was launched in 2000 (eleven in Japanese implies ‘samurai’ and is my favorite number). Forgive this rather personal post, but I wanted to share the first S-Perfume website with our readers. Click the image!

嗅覚は芸術になりうるか ー 否

一昨日、久しぶりにチャンドラー・バールからのメッセージが留守録に残っていた。
面倒なので放っておいたら、翌朝メールがふたつ。案の定、頼み事だ。

そんなことがあって、香水や調香師に関する投稿を随分としていなぁと思ったので、ちょっとだけ...

チャンドラー・バールといえば、ルカ・トゥリンを有名にした「匂いの帝王」を出版後、昨年までニューヨークタイムズの香水評論家として定期的に香水や業界に関する記事を書いてきた。
世界で初めての香水評論家になるという話が決まった時も、『実は話しておきたい事があるけど...』といって電話がかかってきたのを覚えている。
香水評論家なんて世の中は必要としていないよぉなんてことも言えないし、『いいじゃないの!』ぐらいの白々しいことしか言わなかったように記憶している。
評論家先生の仕事は数年続いたらいい方だろうと思っていたら、昨年末コロンバスサークルにあるアートとデザインの美術館に新設された世界で初めての嗅覚芸術センターのディレクターに就任した。上手な転身だ。

嗅覚が芸術として成り立つか? 答えは『否』。今度の新しい肩書きは、十年も持てば大成功と言えるだろう。そうは言いつつも、友達として一肌脱ごうじゃないかという気持ちではいる。

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このブログの香水に関する投稿を御覧になる方で、Perfumery Hiro(パフューマリーヒロ)という香水の情報サイトをご存知の方もいっらしゃるかと思う。この Perfumery Hiroサイトのタイトルにも唱ってあるように、かなりマニアックな情報が多いのに驚かされる。香水文化がなかなか育たない日本において、このようなサイトがあるということは嬉しい限りだ。実は、最近ひょんなことから Perfumery Hiroサイトにおいて、知り合いの調香師の名前が実際と違うサウンドの仮名表記になっていることに気が付いて連絡を差し上げようと思ったところ、フォームメールがすぐに見つけられなかったので(最近老眼の進行が著しく、細かいものを探す忍耐力に乏しい)、失礼は承知の上で当ブログに於いてリンク付きで訂正し、トラックバックによって気が付いていただけることを期待申し上げた。幸いお気付きになり、訂正までして頂けたことに大感謝! 

僭越な行為であることは承知の上、敢えてこのようにリンク/トラックバックまでして、メッセージを送ることを試みた理由を簡単に申し上げると、日本において今までに知られていない海外の人名が仮名に置き換えられる場合は、すでにカタカナになっている同じスペリングの名前と照らし合わせた推測の結果がメディアに登場することが多い。実際に本国でどのように呼ばれているかを、日本人の耳で聞いた上でカタカナに置き換えるなどということは甚だ困難である。今回の例となった調香師 Bruno Jovanovicも、確かに日本では、ブルーノ・ヨヴァノヴィッチとなるのが普通のような気がしなくもない。しかし、これから日本でも少しづつ名前が知られてくる調香師なので、できるだけ本当のサウンドに近いものが定着していって欲しいということで、今回は Perfumery Hiroさんの御協力を頂けたことを大変に有り難く思う次第である。調香師ブルーノ・ジョヴァノヴィックは、両親がユーゴスラビアからフランスに移住後にパリで生まれた。多分両親は、祖国で「ヨヴァノヴィッチ」と呼ばれていたのだろう。ブルーノは、パリのゲットーでジョヴァノヴィックとして育ち、現在住んでいるニューヨークでもジョヴァノヴィックと呼ばれている。

アメリカの女優スカーレット・ヨハンソンですら、本当のサウンドの『ジョハンスン』でなく、今までそう呼ばれたことのないヨハンソンというサウンドになってしまうという不思議な日本だから、誰の名前であろうと外国人の名前は日本流の呼び方で良いのだと思われる方もいるかもしれないが、名前が正しい漢字で表記されなかったり、正しい読み方をされないとと怒る方が多いことからもわかるように、本来我々日本人は名前に関して非常にセンシティブなはずだ。そのようなことから、まだこれから日本での呼び方が定着していくという段階の外国人の名前に関しては、特に注意を払っていくようにしたいと思っている。折角の機会なので、本来のサウンドからかなり懸け離れたカタカナ表記が定着してしまった「運の悪い」調香師を二名挙げてみる。

Laurent Bruyere = ローラン ブリュイエール(本来の音に近いのは、ロホン ブイエー)
Francis Kurkdjian = フランシス クルクジャン(本来の音に近いのは、フホンシス キヨージョン)

スペリングが Francis となっている名前を英語式のフランシスではなく、フホンシスというようにフランス語の発音に最も近いサウンドにカタカナにした前例は無いから、そこまでの無理をする必要もないだろうが、フランス人の口から『ロホン』と聞こえてくるものがローランとなってしまうのには、あまりに英語風で抵抗がある。名前の呼び方というのは、実に難しいものだ。

最後に余談になるが、この Perfumery Hiroを運営されているのは、懐かしのアメ横で香水のお店を経営されている方のようだ。今度日本へ行く機会がある折は、卒業して以来四半世紀の間一度も訪れたことがなかった母校東京芸大を覗いてみて、その足でアメ横へ行ってみることにしたい。

調香師 ブルーノ・ジョヴァノヴィック

今日は、パリからニューヨークに舞い戻って来た調香師ブルーノ・ジョヴァノヴィックが、ボーイフレンドを連れて遊びに来た。ブルーノ・ジョヴァノヴィックは、七月生まれの蟹座でアセンダントが獅子座という点がゲランの調香師ティエリー・ワッサーと同じ。会社の為だけではなく調香師としてのキャリアの上でも非常に重要なプロジェクトであったとしても、クライアントのアイデアや姿勢に興味が持てないとあっさりとそれを無視する点がフィルメニッヒ在籍当時のワッサーに似ている。ちょっと怠け者に思えてしまうぐらいに、のんびりとしたマイペースな点もワッサーにそっくり。以前にこのブログでも大いに自慢をさせてもらったが、香水業界でティエリー・ワッサーがゲランの調香師になる可能性を、その実現の何年も前から語っていたのは私だけだった。現在の香水業界で若い調香師の才能を見抜く実力においてうちの連れ合いの右に出るものはいないようだが、ティエリー・ワッサーが将来ゲランを仕切る可能性については私と意見が合わなかったのを覚えている。そんなことから、ワッサーがゲランの調香師に決定する半年前に連れ合いが、「あなたの予言していた事、本当になりそうよ!」と興奮して知らせてきた時には、どうだ、参ったか!という嬉しい気分を味わった。その連れ合いに、「もしゲランやエルメスのようなフレグランスハウスを持たされた場合に、世界中のどの調香師でも専属調香師として迎えられるとしたら誰を選ぶ?」という質問をすれば、躊躇無く『ブルーノ・ジョヴァノヴィック』という答えが返ってくるだろう。いつの日か彼が、ジャンパトゥかエルメスを背負ったとしても少しも不思議はないかもしれない、と、私も思う。長身だがどことなく東洋的な容貌のジョヴァノヴィックは、昔から日本に強く興味を持っていて、とても日本に行くことを楽しみにしているそうだ。そんなジョヴァノヴィックの、もの静かだが、強く人を引きつける魅力が伝わってくるポートレートがあるので御覧あれ。この写真は、旧くからの友人である渡邉肇氏が撮影したことも付け加えておこう。

普通だけど凄い

「男は汗臭いのが一番、コロンなんか付けてるようじゃダメだね。」

二年前に『夏に一番の香水は?』という特集インタヴューを受けた時に、このようなコメントをして顰蹙を買ったことがある。この気持ちは、今でも基本的には変わっていないと思いたい… と、少し躊躇するような言い方になってしまうのには理由がある。先日御報告したが、この夏は、オリヴィエ・ポルジュの『ラノニム』(我が社の久々の新作)を毎日のように試着している。どことなく暖かい感じがある香りなので、夏向きというような具合に季節の限定されるタイプの香水ではないのだが、異常に蒸し暑い今年のニューヨークの夏に於いても、とても快適な香りなのが嬉しい。そう言えば、乾燥していたけど猛暑だった七月のローマで、この香りに惚れてしまったのだったけか… 以前に「世界香水ガイド」の著者ルカ・トゥリン博士が、『エスパフュームは、車の世界に喩えるなら、オートショーで目にするようなバリバリのコンセプトカーのようなブランドだ。』と述べたことがある。全くその通りである。エスパフュームでは、使い手のことは余り考えず、「未来」だけを見据えてきたが、今回は消費者のことを一生懸命考えている。新作『ラノニム』は、過去のエスパフュームのシリーズからは切り離された、私にとっての初めての『商品』になるだろう。

バリ島でのヴァケーションから戻ってきた親友が、先週末遊びに来た。元々はフィルメニッヒのエバリュエーターだった女性だが、現在はロレアルが抱える香水ブランド(サンローラン、アルマーニなど)の開発に関わっている。親友である彼女とは、日頃アートの話をすることはあっても、香水の話になることはまず無い。それが、先日はうちに来るなり、”Nobi, what are you wearing? You smell DIVINE!” と言い、私が何を付けているのかに興味津々だった。その前日まで、微かにあった疑問が、それでスッカリ吹き飛んだ。香水の世界に於いて、斬新だとか、最先端というコンセプトで香りを創ることに於いては誰にも負けない自信があるし、ドミニク・ロピオンのような調香師達だけではなく、フレデリック・マルやマイケル・エドワーズのような専門筋の間でもこのことを認めてくれる方々が多い。ところが、普通なんだけど抜群に良いものというコンセプトには、今まで縁が無かったわけだ。今回は、オリヴィエ・ポルジュのお陰で『普通だけど凄い』ということに、思い切り開眼することができ大感謝。もともとは、あのシャネルのジャック・ポルジュの息子で将来シャネルを継ぐ可能性大という不純な動機から興味を持ったのだが、2年前にケンゾーパワーに惚れ、折あらば… と、いう感じでいた。今回、この『ラノニム』の香りにすっかりやられてしまい、自分でも結構驚いている。奥が深いとは正にこのことだ。

この『ラノニム』、お値段の方は、12ドルぐらいに収まるよういろいろな面での検討をしている。オリヴィエ・ポルジュの抜群に素晴らしい香りがたったの12ドル、この部分だけは斬新で未来的かな? どちらかと言えば男性的な香りだという意見が周りであるが、個人的には、この香りは女性が着けるからかっこいいと思う。ちょうど、どことなくフェミニンなケンゾーパワーの好対照だ。内容成分はユニセックス用の香水として世界各国の安全基準に沿うようなものになっている。

L’ANONYME OU OP-1475-A

このところブログの更新を怠っている。久しぶりに本業(?)の香水企画に本腰で取り組んでいるからだ。新作ということでは6年振りになるのではないだろうか。今回は商品名を付けずに発表するが、『ラノニム(匿名)・ウ・OP-1475-A』という長たらしい呼び方で紹介されることになるだろう。後ろの部分のアルファベットと数字は膨大な数ある未発表の香水それぞれに付けられる登録照会番号のひとつだと思ってもらえば良い。この香りの調香師はオリヴィエ・ポルジュ。彼が得意とする洗練されて高級感に溢れる香りでありながら、非常にコンテンポラリーな点に惹かれて今回の新製品の発表に踏み切きることにした。このところ欧米は、ニッチフレグランスのルネッサンス。一年ほど前のインタヴューにおいて、「ニッチフレグランスは、映画に喩えるならB級映画」とやってしまい、他のニッチブランドから痛烈な非難を浴びたことがある。ニッチフレグランスは、香りの出来がB級のものがほとんどであるという意味で言ったのだが、お値段の方は超特級のものが多い。100ミリリットル以下の量で、日本円にして2万、3万というものがたくさんある。教養の無い成金が幅を利かすアメリカでは、値段が高ければ特別なものだろうということで、香りの完成度の低いことがオリジナリティだという錯覚に陥ってしまっているニッチファンが多いことに辟易している。今回の新作は、このような現状に一石を投じたいという気持ちもあるのだ。オリヴィエ・ポルジュと云えば現在最も才能のある若手調香師であり、次期シャネル専属調香師の可能性が囁かれている。そんな素晴らしい調香師の出色の逸品を、ニッチフレグランスだけでなく香水そのものの概念を覆すような価格に設定することに興奮している。陳腐な言い方かもしれないが、もっと多くの人に、いつまでも好かれるような素晴らしい香りを、誰もが躊躇せずに買えるような値段で提供するのが今回の目標だ。

日本人は臭い

先月の旅行中に立ち寄ることができなかった為に、未練がましくマルセイユの話題を繰り返すが、たまたま時期を同じくして南仏を旅行していたエックスワイフから、マルセイユの魚売りのオバちゃんの写真が送られてきた。臭ってきそうな写真だが、この魚がブイヤベースになるのかと思うと涎が出てきそうだ。ジャック・キャバリエがこれを見たらきっと卒倒することだろう。大分前の事になるが、ジャック・キャバリエがニューヨークに来た折に、三宅一生氏がニューヨークに行くと必ず寄るという日本料理屋に行ってみたいということから、ティエリー・ワッサー他数名も誘いその店で夕食を共にした。その時にジャックから聞いたのは、一生氏に招かれて日本に滞在するのは大好きだが、新しい香水を日本人の肌でテストしなくてはならないのが辛いということだった。日本人の肌は魚の匂いがしてかなわないらしい。そういえば、日本に住んだ経験のあるクリストフ・ロダミエルも似たようなことを言っていた。クリストフによると日本の地下鉄は生臭い匂いがして、ニューヨークの地下鉄よりもタチが悪いというのだ。我々は外国人の体臭が強いと思いがちであるが、我々自身の体臭には意外と鈍感なのかもしれない。まっ、そうは言っても、人の体臭が漂う国において香水文化が育つことを思うと、「日本人は臭い」という外国人からの意見が増えてくることによって、日本の香水市場ももっと活溌になってくることを期待したい。

(注:90年代の寵児ジャック・キャバリエは、世界屈指の調香師。出世作であるロードイッセイの世界的に根強い人気により、イッセイミヤケというブランド名が不動のものになった云われる。ティエリー・ワッサーは、世界的名門メゾンであるゲランの5代目調香師。ゲラン一族以外からの初めての調香師ということで大きな期待が寄せられている。前出の二人と比べ一回り若いクリストフ・ロダミエルは、今までの調香師のイメージには当てはめることのできない異才。日本では紹介されなかったが、ティエリーミュグレー社の援助を受けて映画「パフューム -ある人殺しの物語-」の為に、限定販売の非常に高価なコフレを創ったことでも知られる。)