WWDIS Blog - Page 69

Plof lamp by Yonoh

“NEW IMAGE! Plof lamp, designed by Yonoh, was reissued with a new image, photography and an own website with all the necessary information and additional content, such as the video of the making of photo shoot.”

www.plof-lamp.com

迷走

ベビーファット、バレンシアガ、カルバン・クライン、セルッティ、クロエ、ダビドフ、ジェニファー・ロペス、ジルサンダー、ジョープ!、カール・ラガーフェルド、ケネスコール、グウェン・ステファニー、マーク・ジェイコブス、ノーティカ、ファットファーム、サラ・ジェシカ・パーカー、ヴェラ・ウォン、ヴィヴィアン・ウエストウッド…

フランソワ・コティが1904年にパリで始めた香水のビジネスは、一世紀経った今日世界で最も多くの香水ブランドを抱える大企業に成長した。香水製造販売では世界最大であるコティ社の香水部門総括責任者は、キャサリン・ウォルシュという小柄な銀髪の女性だ。パリとニューヨークの間をエネルギッシュに行き来するウォルシュが、果たして香水のことをよく理解しているのかどうかという点については、今までにもいろいろなところから疑問の声上がってきた。絶対に成功しないと云われていた『セレブリティー香水』というジャンルを、巨大なヒットに導いた見事な腕前は、むしろ類い稀なマーケティングの才能によるものだろう。過去にビーピーアイ資生堂で大活躍したシャンタル・ロスや、クラランスの所有するティエリー・ミュグレーの歴史的傑作「エンジェル」を生み出したヴェラ・ストゥルビなどのように、真に香水産業を理解していた偉大な香水*プロデューサー*達とこのアメリカ人女性ウォルシュを一緒にすることは、先人達への冒涜となるような事態が数日前から持ち上がっている。

この「珍事」の片棒を担いでいるのは、トレンディーなゲイの男性が大好きなウォルシュと個人的に親しい調香師フランシス・クルクジャンだ。ことの内容はというと、現在コティが所有するカルバン・クラインの香水ブランドに於いて、ブランドの設立当初から長年に渡り企画の陣頭指揮を取り、業界では最も恐れられている独立コンサルタントのアン・ゴットリーブ(ユニリーバ・ジャパンのサイト上で誤った情報を記載しているので正しておくが、アンは香りの錬金術師であったとしても、実際に香りを創ることのできる調香師ではない)がお役御免となり、調香師であるフランシス・クルクジャンが今後のカルバン・クラインの香水企画のコンサルタントとして迎え入れられたというものだ。フランシス・クルクジャンが調香師として香りを作る側になるのではなく、やかましいクライアントが「ここは、こうしろ」だの「もっと、こんな感じにしてくれ」と言って、作り手を苛つかせるような注文をジボダンやフュルメニッヒのベテランの調香師につけるという、すでに充分無駄だらけで複雑怪奇だった香水制作のプロセスを、救いようのない程とんちんかんなものにする極めてナンセンスな話だ。

大手の香料会社は、ウォルシュの馬鹿げたアイデアにうんざりだという反応を示しているが、数年間に渡りフランシス・クルクジャンと顧問契約を交わしてきた高砂香料はどういう立場にいるのだろう。もしかしたら、高砂香料がフランシス・クルクジャンとの契約を更新しないという背景があり、彼がお金のかかる自分の新事業を維持するために苦し紛れに画策した小遣い稼ぎの手段なのかもしれない。

とにもかくにも、これは、持論である『香水産業は贅肉を削ぎ落とさなければサバイブできない』ということと正反対だ。セレブリティー香水のヒットは良かったが、景気の落ち込みとともにコティも首をすげ替えるべき時期なのだろう。

(もう一言:フランシス・クルクジャンは調香師としては傑出しているが、香水産業の将来を見極める才はゼロのようだ。コンサバティブなタイプの調香師だから仕方ないのか…)

閃き

「調香師たちを啓発するいい方法はないかしら。調香師たちに何か面白い講義でもしてくれる気はない?」

「冗談じゃない。人に何かを教えたり話をするのが大嫌いだから大学時代に教職単位も取らなかったわけだし、見えないものではあるけど、仮にも、ものを創るという姿勢であるべき連中にそんなことが必要だと感じるということは、おたくの会社も終わってるねぇ…」

最近、二、三度つれあいとの間でこのような会話があった。つれあいは、某社の30名以上いるファインフレグランスの調香師たちのボスである。彼等の給料やボーナスを決めることも仕事のうちだが、大きなプロジェクトの割り振りを決めたり、ライバル社から有能な調香師を引き抜いたりといったようなことも彼女の役割だ。お小遣いをあげたり、宿題の面倒をみたり、愚痴を聞いたりと、言わば調香師たちの母親のようなものだな、と、言って時々からかうことがある。子供の学校や塾での成績が悪いと母親が心配するのと同様に、調香師の仕事に閃くようなものがしばらく無いと心配するらしい。

「クライアントがくだらない仕事しか頼んでこないのだから仕方がないのじゃないかな。」と、いうようなつっけんどんなことを言った記憶もある。自己完結してしまうアーティストの仕事とは異なり、香水はクライアントとの協調関係で作品が出来上がるものだから、ロレアルやエスティーローダーが退屈なコンセプトの仕事を頼んでくる限りは、調香師がなかなか本領を発揮できないのも致し方のないことだ。素晴らしい施主と出会ったことがきっかけで世界的な名建築をデザインした建築家の例がいかに多いかという事実からもわかるように、作り手の才能を生かすも殺すもクライアント次第。キャバリエにしろ、グロスマンにしろ長年名作を生み出せないでいるのは、香水業界がアメリカ的な目先の収益しか考えられない体質になってしまったからだろう。アメリカが鉄屑みたいな車しか作れないようになってから数十年経つが、ロレアルやエスティーローダーが牛耳っている香水業界も同じ道を辿っているようだ。

極論であるが、今後はこれら大手の化粧品会社の生産する香水を作っていくに当たり調香師は必要がないと言っても過言ではない。すでにジボダンやフィルメニッヒのような大手香料会社には莫大な量のデーターがあり、この無限に蓄積されたデーターから機械的にクライアントの希望する香料の成分を出せるようになるはずだ。そうなった場合、もともと数の多くない調香師という職業の行く末はどうなるのだろう… この難問を切り開くのにこそ閃きが必要なはずだ。残念ながら、メナルドやクルクジャンのような才気溢れる調香師たちにもこの業界に新地を切り開くような才能は無さそうだ。こういった閃きは意外なところからやってくるのかもしれない。