このところ、香水に関する投稿があまり無く寂しい気もするが、景気が悪いと面白い話も無い… というよりも、人員削減とか、今まで数年かけて積み上げてきた素晴らしい計画が一夜にして消え去ってしまったとか、今後の香水業界があまり面白くないようなことばかりが聞こえてくるので、日本のデザインとか建築を眺めていた方がずっと楽しいのである。

単純な話だが、景気が悪くなっても余程のことがない限り、人は洋服を着て、風呂に入って、家に住むわけだから、デザインということは常に存在し続けるのである。それとは反対に香水は奢侈品に過ぎず、特に日本においては非常に消費量の限られたものであるから、存在することの必然性のようなことを考えると虚しくなるばかりである。

そんな折、ちょっと元気の出る香水がらみのニュースをふたつ。

ひとつは、日本では(当然の如く)知られていないが、このブログでも時々名前の挙る現在世界で最も注目されている若手の調香師が、一昨日、「自由」を追い求めるという理由で所属していた大手の香料会社に辞表を提出した。メディアへの正式な発表はまだ先のことなので名前は伏せておくことにするが、彼の勇気を大いに褒めたたえたい。香水業界の今後を根底から変えることのできる調香師がいるとすれば、彼の他にはほとんど見当たらない。

もうひとつは、今年の初めに欧米の香水ファンの間で大きな話題になった、「匂いの帝王」ことルカ・トゥリン博士とその奥様であるタニア・サンチェス女史が出版した、世界で初めての本格的な香水のガイドブックの日本語訳が、12月5日に発売となる。題して『世界香水ガイド☆1437』、原書房からの出版。原文の非常に巧みな文章を考えると日本語訳は非常に困難であったはずだが、それを押してまで香水のマーケットとしては取るに足らない規模の日本において訳本が出版されるというのには少々驚かされた。